このタイトルもそろそろ合わなくなって気がしますが、気にせず続けます。
ローカルな地名であまり馴染みのないかたもいるかと思いますが、北海道のオホーツク海側、北見・網走の北隣に位置する遠紋地区(遠軽・紋別)という二次医療圏のお話です。
そこの西紋地区(紋別市、滝上町、興部町、西興部村、雄武町)の中核医療施設である道立紋別病院が二次医療施設としての機能を維持できなくなってしまい、西紋地区の医療体制が窮したという話でした。
そこに、道の地域医療計画の一環としての道立紋別病院の地元自治体への移管問題が加わって、移管条件などで道と地元自治体による広域連合との
駆け引き交渉が本年度末を期限に延々と行われてきました。
で、最近のニュース。期限ぎりぎりでとりあえず政治的には決着したようです。
紋別病院移管に合意 知事と市長5月にも調印
道立紋別病院(紋別市)を地元5市町村に移管する問題で、高橋はるみ知事と宮川良一紋別市長ら地元市町村長5人が29日、道庁で会談し、移管に合意した。5月にも調印し、移管時期は来年4月の見通し。道立病院を複数自治体に移管するのは初めて。
移管は地元にとっては病院の存続であり、道にとっては合理化の一環。道は総額98億円を基金として提供。5市町村は基金を活用、病床数150床の新病院を建設する構想を描き、基金は移管後8年間の赤字補てんにも充てられる。
会談で宮川市長は「合意を迎えられ、大変意義深い。道の全面的な協力、支援をお願いしたい」と述べ、知事は「移管がスムーズに行くよう、力を合わせていきたい」と応じた
(2010年3月30日 北海道新聞)
こちらは、もうちょっと詳しく報道しています。
紋別病院の広域連合移管問題~知事と西紋が「大筋合意」
北海道立紋別病院の西紋広域連合への移管問題で、西紋の5首長は29日、北海道庁で高橋はるみ知事と面談。建て替え費用や赤字補填などを合算した総額98億円を道が拠出する基金方式による移管に、大筋で合意した。これは22日に来紋した山本邦彦副知事の提案を、西紋側が受け入れたもので、高橋知事は「私たちが最終的に提案した内容で合意でき大変うれしく思う。全道で初めての広域連合への移管がスムーズに進むよう力を合わせていきたい」と述べた。山本副知事の提案は「120床の移転改築」または「160床の現地改築」の2案だったが、地元が主張する「150床での移転改築」についても道側は「総額98億円の中であれば」という条件で理解を示している。来年4月の移管を目指す。
面談には宮川良一紋別市長をはじめ西紋4町村の首長、それに北原秀一郎道議が出席。高橋知事や山本副知事らが対応した。
最初に宮川市長が、22日に山本副知事が提案した内容である「総額98億円での基金方式」と、移管時の医師数14人について「北海道が責任を持って約束するとのお話をいただいた」ことを確認。その上で「知事と大筋での合意を迎えられることは、西紋としても大変意義深いこと」と述べ、今後の移管事務作業においても道の全面的な協力支援を求めた。
このうち医師確保について高橋知事は「できる限り体制整備する努力をさせていただく」とトーンダウンしたものの「私としても地域の皆さんの命と健康を守る病院の重要性は誰よりも強く思っている」として、今後の移管作業への協力も約束した。
知事の答弁を受けて5市町村の首長と北原道議もそれぞれ「決断した以上、しっかりと責任を果たしたい」(田原賢一雄武町長)、「知事が座長を務める北海道医療協議会など関係者の皆さんにお礼申し上げたい」(硲一寿興部町長)、「自治体病院を持つ4町村としても、広域で2次医療・2次救急体制が確立されることは心強い」(長屋栄一滝上町長)、「新しい方向に向かって進みますが、引き続きよろしくお願いします」(高畑秀美西興部村長)、「合意に向けて多くの方にご支援・ご苦労いただき、感謝している」(北原秀一郎道議)、「住民にとって大きな希望になる。素晴らしい病院作りに向け取り組んでいきたい」(宮川市長)などと、喜びの言葉を語った。
(2010年3月30日 北海民友新聞)
要点としては、
- 病院建設費・赤字補てんなどに、道が98億円を提供。
- 病院は、リフォームではなく移転新築。
- 病床は150。
- 医師14人体制(道の責任で)
- 移管は一年後(来年4月)
付け加えると、病院運営方式は、
公設公営だそうです。
いろいろ突っ込みドコロがありそうな内容ですが、とりあえず
医師数について軽く突っ込んでみます。
なお、道立紋別病院の外来診療担当医師表を見ると、現在、常勤医は内科2,外科3,婦人科1名の計6名で、あとは出張医対応となっています。
これを、来年4月までに14名まで増員するということですね。
奇しくも同日にあった報道を引用します。
自治体病院への医師派遣 要望22人、決定4人 道医対協新年度
医師不足に悩む道内自治体病院のため、医師派遣を行っている道医療対策協議会(医対協、会長・高橋はるみ知事)は29日、新年度当初からの常勤医の派遣希望22人に対し、4人の派遣にとどまることを明らかにした。過去最少だった本年度当初の6人より少なく、医師不足の深刻さをあらためて浮き彫りにした。
医対協は、道や市町村、道内3医大などで構成。2005年度から、大学病院などからの常勤医派遣を断られた自治体病院からの依頼を受け医師を探し、派遣を行っている。
医対協によると、市立美唄病院や網走管内の斜里町国保病院など16病院が、計22人(本年度は12病院18人)の派遣を希望したが、医師不足のため札医大から内科医3人、小児科医1人の4人しか確保できなかった。
条件面などから、渡島管内の八雲総合病院、長万部町立病院と、檜山管内の今金町国保病院、空知管内の幌加内町国保病院に振り分けた。
一方、派遣を受けられない病院の中には、後志管内の黒松内町国保病院、胆振管内の豊浦町国保病院、宗谷管内の礼文町国保船泊診療所の3病院のように、4月から常勤医が1人となる病院もある。
医対協は「できる限りの支援をしていきたい」としており、引き続き医師確保に努める方針だ
(2010年3月30日 北海道新聞)
ダメ押しに、本年2月の報道からも。
道内104病院医師不足 全体の2割 道、確保策を強化
道内476病院のうち、医師不足が原因で診療科の閉鎖など機能縮小の恐れがある病院が全体の2 割強の104病院に上ることが、道の調査で分かった。不足している常勤医師数は計336人に上 る。道は「地方を中心に医師不足の厳しい現状は変わっていない」として、新年度予算で医師確保策 を強化する。
(2010年2月24日 北海道新聞)
平成22年度に道が招聘・派遣できる医師は、4名だけだそうで、それも派遣先は決まっているとのことです。
これまでの一連の報道からすると、地元自治体からなる広域連合が自ら医師招聘に尽力する気はさらさら無いようですから、道は、紋別病院への派遣医師を新たに8名探さないといけないことになります。どんな秘策を以て事を成すのか見当もつきませんが、道は、医師不足に困っている病院があまたあることも、常勤医1名でかろうじて維持されているような病院・診療所があることも、よくご存じな訳です。こういう状況を熟知した上で、紋別病院に8名を重点配備するような決断をするのか興味津々といったところでしょうか。1年後が楽しみです。
熱心というほどではないにしても、それなりにウォッチングしていた者として改めて思うのですが、医師数に限らず、そもそも広域連合の構想する地域医療像自体がよく判らない気がするんですが、それとも単なる私の勉強不足なのかもしれません。
例えば、紋別市のHPの「
医療確保対策室からのお知らせ」にある
「広域連合立紋別病院(仮称)の概要案」というファイルを読むと、新病院の規模・機能は、
診療科:内科、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、神経内科、外科、産婦人科、小児科、 整形外科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、泌尿器科、麻酔科、精神神経科、放射線科、 肛門外科、リハビリテーション科
病床数:一般160床 人工透析15台
医師数:26名(消化器内科3,循環器内科3,外科3,整形外科3,小児科3,産婦人科2,精神神経科1,眼科1,泌尿器科1,麻酔科2,総合診療内科2,総合診療外科2)
診療機能:- 地域センター病院
- 災害拠点病院
- 救急告示病院
- エイズ拠点病院
- 第二種感染症指定医療機関
- 地域周産期母子医療センター
- その他(保険医療機関、労災保険指定病院、生活保護指定病院、更生医療指定病院、 精神科救急医療システム病院、養育医療指定病院、 原子爆弾被爆者一般疾病医療取扱病院)
という構想だと判ります。
産科医2名と小児科医3名で地域周産期母子医療センターを標榜するつもりのようですが、道との最終合意では医師は26名からさらに減り、うまくいっても14名です。この14名で上記の診療機能を維持するつもりなのか、これまでの報道でも市のHPを探しても、皆目判りません。
外野の勝手な言い分なのは承知してますが、道から100億円近い資金援助を得ての病院移管は、自らの手で自分たちの医療を再構築する、まさに千載一遇の機会だったと思うのです。
正直言って、医師14名ですべての疾病、傷害に対応するのは難しいと思います。先ほどの概要案では、脳血管疾患には対応できませんし、病状が安定し慢性期に移行した患者の受け皿となる療養病床も含まれてませんから、病−病連携、病−診連携が欠かせないハズです。ですが、先の概要案には「地域の医療機関と連携・役割分担」とはあるものの具体的な記述はありませんし、その後も、そういった議論があった様子があまり伺えないのは、気のせいでしょうか。
釧路市では、地域医療を維持するために3病院が協力して、産科、循環器科、小児科などを1つの病院に集約化するという試みがありました。その賛否は別としても、遠紋でもそういう検討があってもよかったんじゃないかとも思うわけです。
例えば、紋別と遠軽で別個に地域周産期母子医療センターを標榜するよりも、統合して総合周産期母子医療センター化することで、高度な周産期・新生児医療の提供と、産科医・小児科医の負担軽減が図れないかとか、とりあえず議論くらいはあってもよかったんじゃないかと、外野は勝手に思うのですが、まあ色々と難しいんでしょうね。
道立紋別病院の移管、道の回答に、市長も議員も怒り心頭
道立紋別病院を紋別市など西紋5市町村に来年4月から移管しようとする問題で、西紋側が道に要望した移管条件に対する道の回答内容が25日、紋別市議会の道立紋別病院に関する特別委員会(柴田央委員長)に報告された。道による赤字補填は、西紋側が求めていた「移管後10年間にわたり全額」ではなく「8年間にわたり一部」とするなど、西紋側の要望していた条件を大幅に下回る内容だった。これを受け西紋5市町村の首長は道に対して再検討を求めることも報告された。市議会特別委の委員からは「我々は道に馬鹿にされているのか」「怒り心頭の内容だ」など驚きと憤怒の声が一斉にあがった。
鈴木敏弘委員は「あまりにも誠意のない回答。ムシロ旗を立ててでも道に乗りこむ気概がないとダメだ」と主張。宮川正己委員は「そもそも道立紋別を2次医療機関として再生させることを目的にしていたはず。160床から100床に縮小されているが、これは2次医療といえるのか」と質問した。
市側も「大変難しい問題だが、我々が現場の先生に聞いた範囲では100床の規模(とそれに見合う医師数)では2次医療・2次救急は難しいと聞いている」と答えた。
野村淳一委員は「ということは道は遠紋圏のなかでは遠軽厚生病院が完全な2次医療という考えか。紋別は1次医療に毛が生えた程度だけのものだとしか見えない。不愉快だ」と怒りを表した。
市側も「我々も2次医療・2次救急が保たれないなら、地域自ら(病院経営を)やる必要はないと考えている。2次の確保が絶対条件として今後も道と交渉する」と決意をにじませた。
宮川良一市長も発言し「私も非常に残念。道は地域医療をどう考えているのか。100床という規模は全くナンセンス」と語気を強め、今後も強い態度で道と交渉する姿勢を見せた。
(2009年8月26日 北海民友新聞)
ついでですが、ひとつに気になったことがあります。
一連の報道を見る限り、新病院の運営方式、病床数、医師数などは、決定までにけっこう変遷してるんですが、だた一点、広域連合が、絶対にブレず、譲らなかったことがあります。
それは、新病院は
「現地建て替えでなく、移転新築で」という点です。
道が、現地建て替えなら160床でOKと提案しても、150床に減らしてまで移転新築を選択したのですから、病床数よりも優先度が高かったということなのでしょう。
移転候補地は、
紋北(北海道紋別北高等学校)の跡地が有力とのことです。
よほどの地の利があるのかと思い、Google Mapを見ました。
両隣が小学校と中学校ですね。スクールゾーンを救急車が突っ走るのか〜。