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2009年9月25日金曜日

道立紋別病院 救急撤退(10)

最近の道立紋別病院の報道をまとめてみました。来春に広域医療連合への移管が予定されていますが、雲行きが怪しいようです。

道、赤字補てんは8年 5市町村反発 再考要請へ

【紋別】道立紋別病院を紋別市など網走管内5市町村へ来年4月に移管するための協議会で、地元側が示した移管条件に対する道の回答内容が21日、分かった。焦点となっていた赤字補てんの機関などで地元の要望を満たしておらず、紋別市の宮川良一市長ら5市町村長は21日、対応を協議。回答を不服とし、道に再考を求めることで一致した。

 道の回答によると、赤字補てんは地元が新病院完成後10年間を求めていたが、移管後8年間とした。新病院建設の全額道費負担については、道は一部にとどめる考えで、病床数も160床の要求に対して、100床程度とした。

 また、移管後の病院の位置付けについて、地元側は高度な2次医療を担う「地域医療センター病院」とすることを要望したが、道から明らかな回答はなかった。

 道立紋別病院の移管をめぐっては、道と5市町村が7月末までに基本合意を締結する予定だった。しかし、道が回答を先送りしていた。協議が難航していることから、来春の移管に向けた基本合意は厳しい状況となりつつある。
(2009年8月22日 北海道新聞)

どうやらこの記事によると、
  • 10年間は道が赤字を全額負担せよ
  • 病院は新築せよ。なお、建設費は全額道が負担せよ。
  • 高度医療ができる病院にせよ。
  • 病床数は160床

ということのようです。
2次医療施設にするにしては病床数160はいかにも中途半端で、赤字必須としか思えないのですが、赤字は道が負担しろという要求ですから、知ったこっちゃないんでしょうか。
(でも、仮に要求が満額通ったとして11年目からはどうするんでしょうか?)

で、満額回答しなかった道に対して、

道立紋別病院の移管、道の回答に、市長も議員も怒り心頭

 道立紋別病院を紋別市など西紋5市町村に来年4月から移管しようとする問題で、西紋側が道に要望した移管条件に対する道の回答内容が25日、紋別市議会の道立紋別病院に関する特別委員会(柴田央委員長)に報告された。道による赤字補填は、西紋側が求めていた「移管後10年間にわたり全額」ではなく「8年間にわたり一部」とするなど、西紋側の要望していた条件を大幅に下回る内容だった。これを受け西紋5市町村の首長は道に対して再検討を求めることも報告された。市議会特別委の委員からは「我々は道に馬鹿にされているのか」「怒り心頭の内容だ」など驚きと憤怒の声が一斉にあがった。
 鈴木敏弘委員は「あまりにも誠意のない回答。ムシロ旗を立ててでも道に乗りこむ気概がないとダメだ」と主張。宮川正己委員は「そもそも道立紋別を2次医療機関として再生させることを目的にしていたはず。160床から100床に縮小されているが、これは2次医療といえるのか」と質問した。
 市側も「大変難しい問題だが、我々が現場の先生に聞いた範囲では100床の規模(とそれに見合う医師数)では2次医療・2次救急は難しいと聞いている」と答えた。
 野村淳一委員は「ということは道は遠紋圏のなかでは遠軽厚生病院が完全な2次医療という考えか。紋別は1次医療に毛が生えた程度だけのものだとしか見えない。不愉快だ」と怒りを表した。
 市側も「我々も2次医療・2次救急が保たれないなら、地域自ら(病院経営を)やる必要はないと考えている。2次の確保が絶対条件として今後も道と交渉する」と決意をにじませた。
 宮川良一市長も発言し「私も非常に残念。道は地域医療をどう考えているのか。100床という規模は全くナンセンス」と語気を強め、今後も強い態度で道と交渉する姿勢を見せた。
(2009年8月26日 北海民友新聞)
なかなかいい雰囲気が出てますね。ムシロ旗立てて一揆ですか。
委員の「遠軽厚生病院が完全な2次医療で、紋別は1次に毛が生えた程度」、「不愉快だ」発言なんかもいかにもな感じでいいですね。隣村と、どっちが立派な蔵を建てるかとか、メンツの張り合いではないと思うのですが。

こんな発言を聞いて、ここで医療を続けたいと思い続ける医療者がどれだけいるでしょうか。



で、市民の会が「黙ってられない」と行動に出ることを決めたそうです。
難航する道立紋別病院の移管協議〜市民の会「黙ってられない、行動の時だ」

 道立紋別病院の医療機能等の充実を求める紋別市民の会(会長=知見喜美男紋別商工会議所会頭、市内22団体で構成)の幹事会が7日、紋別経済センターで開催され、難航している道立紋別病院の移管問題について、会として、市民的な運動を展開し道に対し早期の移管を訴えていくことを確認した。具体的な活動の方法は未定だが、署名活動も視野に入っている。
 西紋5市町村が道立紋別病院を道から移管を受け、来年4月から新しい病院として運営していく問題は、西紋5市町村側が移管にあたって道から支援を受けようとする条件と、これに対する道からの回答の中身が大きく食い違っていて、交渉は暗礁に乗り上げている。
 西紋5市町村側は道に対して13年間(移管を受けてから改築までの3年間+新病院完成後10年間)の赤字の全額補填を求めていたのに対して、道側の回答は8年間(改築までの3年間+改築後5年間)の赤字補填で、1年あたりの補填額に上限(4億4500万円)を設定した。
 また新病院の建築費について西紋側は全額道の負担で、病床数は160床と提案したのに対して、道側は100床程度で、建築費は上限を設けて補助する考えを示した。
 西紋側が求める高度な2次医療病院という位置付けについても、道は明確な文言を示していない。
 全体として、2次医療機能を想定した病院かどうかは不透明で、財政面でも地元に大きな負担を強いる内容になっている。8月25日に開催された市議会の特別委員会でも、内容の報告を受けた市議側から道に対する強い不満や怒りが噴出。宮川市長も「(道の回答は)非常に残念。ナンセンスだ」などと述べた。
 「市民の会」の幹事会には、市内の産業団体、町内会など市民各層の12団体から13人の代表が出席。
 市側からは医療確保対策室の姫田潤市室長ら7人が出席し、これまでの経緯や西紋の提案と道の回答との、乖離(かいり)の程度などを説明した。
 出席者側からは「道の回答は、地元の提案と乖離していることは分かったが、道が全部の提案を飲んでくれると本当に最初から考えていたのか。道の厳しい回答も見越して、次の手をあらかじめ考えておくのが、行政のプロではないか」と市側に対する厳しい声も出た。
(2009年9月9日 北海民友新聞)

どんな行動をされるのかなー、と思っていたのですが、先日の報道で行動内容が判明しました。
道立紋別病院問題、2次医療の確保求めて署名活動決定【紋別】

北海民友新聞 - 2009/09/14 12:32
 道立紋別病院の医療機能の充実を求める市民の会(会長=知見喜美男紋別商工会議所会頭)は11日、紋別経済センターで正副会長会議を開催し、道立紋別病院について、2次医療機能と、圏域における救急の中心的な役割を果たすことを道に対して求める署名活動を行うことを正式に決めた。12日から順次市内各町内会長に署名用紙を配布し協力を求める。全市民を対象にし最低でも1万5000人程度の署名を集めたい考え。

 7日開催された同会の幹事会で、なんらかの行動を起こすことを決め、具体的な中身は、正副会長会議に一任されていた。

 署名の趣意書は、紋別市を含む西紋5市町村と北海道の間で行われている道立紋別病院の移管協議が難航している状況を挙げ「このままでは道立紋別病院の更なる医療機能の縮小による『地域医療の崩壊』が懸念」されることを強調。

 「北海道病院事業改革プラン」に示されている道立紋別病院の位置づけが「地域の医療需要に対応し得る2次医療機能の確保」「圏域における救急・災害医療の中心的な役割を果たす」ことであることを挙げ「このことに最大限の努力を強く求める」としている。さらに「西紋別地域にとって唯一の2次医療センター病院である道立紋別病院に必要な常勤医師の確保や医療機能・サービスの充実、また地域医療の抱える問題解決への支援などを北海道へ要請する」としている。

 署名は今月末までに取りまとめ、10月上旬に知見会長らが道を尋ね、道知事、道議会議長に署名を提出したい考え。

 署名の対象には年齢の制限などを設けていない。

 「市民の会」は商工会議所、農協、漁協、森林組合などの各産業界、文化、福祉、町内会の組織など22の団体で構成されているが、署名集めについては、ほぼ全市民を網羅している市町内会連絡協議会を中心的な窓口として進めていく。
(2009年9月14日 北海民友新聞)

アー、はいはい、署名ね。
まあ、年齢制限がないというのが目新しいかも。拇印でも構わなければ0歳から活動に参加できますね。


報道を介してしか状況が伺えないのですが、行政も、市民の会も「道」任せという姿勢がちらほらしてる感じがします。私の気のせいならいいのですけどね。


最後に、道立紋別病院とは直接関係はありませんが、明るいニュースなので載せておきます。

【キャンセル恐れず要請を】 ドクターヘリ導入を前に講演会

【紋別】道北ドクターヘリ運航調整研究会が主催する講演会が5日、紋別市文化会館で開かれた。旭川赤十字病院を基地病院として10月7日から遠紋管内を含む道北地域で運航が開始されるドクターヘリについて、専門の医師らが講演した。
 ドクターヘリは医師や看護士を乗せて救急現場に向かい、現場から病院に搬送するまでの間、救命措置を行うことができる「空飛ぶ救急室」。運航は日中に限られているが、100キロ圏内を30分で搬送が可能。道北地域では縦300キロ、横200キロほどの範囲で56市町村が対象となっている。
 講演では、2002年から道央圏での運航を行っている手稲渓仁会病院救命救急センター長の高橋功医師が「従来のシステムでは救われなかった命が救えるようになる」と強調。「ヘリでの搬送結果、患者が軽症であっても容認される」とも語り、キャンセルを恐れず素早い出動要請が重要であるとした。
 また、旭川赤十字病院副院長の住田臣造医師は、年間の出動予想件数が300件ほどになるとの見通しを示したほか、同病院で今年7月にドクターヘリによる初搬送を行った際の映像も公開した。
(2009年9月9日 オホーツクオンライン)



不要不急の救急外来受診や救急車の利用を控えるように、自治体や医師会などが広報活動に努めている昨今、なんとも頼もしいお言葉ではありませんか。

2009年9月24日木曜日

秋の野鳥

秋です。近場の公園でもドングリや栗がたくさん落ちていて、木の実が豊富なせいでしょうか、小鳥やリスなどの小動物も夏よりよく見かけます。

で、先日見かけたのがこれです。





大きさはスズメくらい。調べたら、「ヤマガラ」という鳥でした。
カラフルな鳥で、羽と足が青みがかった灰色で特に綺麗です。

ほかにも、ゴジュウカラやコゲラ(だと思いますが)なんかも見かけたのですが、すばしっこくてカメラが間に合いませんでした。残念。

ちなみに、私は鳥のことは詳しくないので、その都度名前を調べるのですが、その際に重宝しているのがこの2つ。


前者はポケットサイズで内容も見やすく、使いやすい本です。
後者は、鳥の鳴き声が収録されているのが特徴です。梢に隠れて鳴き声でしか判らない鳥もいる(そのほうが多いかも)ので重宝します。

だいたいは、この2つで種名がわかります。ゲーム機といっても侮れませんね。

2009年9月23日水曜日

後期高齢者医療制度とかメタボ健診とか

いきなりですが、

「高齢者の医療の確保に関する法律施行令」
(政令第318号 平成19年10月19日公布)

という政令があります。
(厚労省のHPのここからリンクをたどれます。)

名前から察しがつくかもしれませんが、後期高齢者医療制度のための政令です。

で、その冒頭部分には

第1章 特定健康診査
第2章 後期高齢者医療制度
とあります。

「特定健康診査」よりは、通称の「メタボ健診」のほうが通りがいいでしょうか。


メタボ健診は、未病に努めて医療費削減というのは建前で、本音のところは、高齢者医療費を健保(=現役世代の保険料)からもっと取り立てることが目的です。
メタボ健診/指導の結果が目標値まで達しないと、ペナルティとして後期高齢者医療制度への拠出金が割り増しになるという制度になっていて、しかも、その目標値は厚労省が自在に設定できます。

いわば表裏一体な制度ですが、政令まで一緒だとは、先日知人に教わるまで知りませんでした。


政権が替わって、公約通りに後期高齢者医療制度が廃止されるのか気になるところですが、もしこの政令が廃止されるなら、一連託生でメタボ健診も廃止されるかも。

別の政令でメタボ健診を継続する可能性もありますが、前期高齢者医療費に後期高齢者医療費、さらにメタボ健診費用と増す一方の負担に耐えかねて解散する健保組合がすでに出ています。
強欲な粉ひき屋が、もっと稼ごうとロバを鞭で打ちすぎて死なせてしまい、結局、自分が臼を回す結果になったとかいう寓話があったような気がしますが、そんなことを思い出しました。

いや、単にそれだけの話です。つまんなくてすみません。

2009年9月15日火曜日

自分で自分を補めてあげてね

産科・救急医確保へ7300万円 道補正57病院に手当補助

 医師不足 や過重労働が問題となっている産科医や救急医の待遇改善に向け、道は道内の病院に対して医師への手当などを補助する事業を始める。15日開会の定例道議会 に提出する補正予算案に約7300万円を計上。延べ57病院が補助を活用する予定で、将来的な医師数増に結びつくか注目される。

 補正予算案に盛り込まれるのは、①産科医確保支援(約4200万円)②救急勤務医支援(約2200万円)③女性医師就労環境改善緊急対策事業(約900万円)−の3事業。敬遠されがちな分野の医師を増やすことを目的に国が本年度予算に盛り込み、都道府県などに事業化を要請して いた。

 産科医確保では、1分娩につき医師に1万円を支給。さらに産科研修医には月5万円を補助する。道の事前調査によると、分娩手当では道内35病院、研修医への補助では4病院が、それぞれ制度利用の意向を示している。

 また、救急勤務医手当では、救急救命センターなどの勤務医に休日・夜間の手当として1日最大約1万8千円が支給される。これは13病院が活用する見通し。女性医師対策では、子育てなどによる離職を防ぐため、短時間勤務などの制度を導入した病院に補助金が支給され、5病院が活用予定となっている。

 道内では2006年までの10年間で、医師総数は1300人増えて1万1579人となったが、産科医は80人減の359人。拘束時間の長さや訴訟リスクの高まりから産科離れは顕著になっている。
 また救急医も、不規則な激務が敬遠され、確保が難しくなっているのが現状。医師不足の中、女性医師の離職をどう減らすかも大きな課題となっている。

 ただ、今回の事業では、支給される手当や補助金のうち、2分の1から3分の1は国の予算で賄われるが、これを除いた分は、道が財政難により独自補助を断念したため、制度を活用する病院側が負担しなければならない。

 例えば、分娩手当の1万円は3分の1が国の補助で、残り6千円余りは病院負担となる。「経営が苦しい中、負担が重い」(道央の自治体病院)との声も多く、制度を導入するのは道内で分娩を扱う113施設の約3割にとどまる見通し。

 道は、病院側の負担を軽減する独自補助については「負担は厳しい」とする一方、「制度の充実と拡大には最大限の努力を続ける」としている。
(2009年9月14日 北海道新聞)


記事中の丸数字部分は、PCによっては文字化けしているかもしれません。

先頃北海道新聞のHPがリニューアルされましたが、ネットでは記事のキモのところが省略されるようになってしまったのは残念。というわけで、紙面から起こしてみました。

7300万円で産科・救急問題、女医支援に足りるのか(んな訳ないでしょう)とか、休日・夜間手当以前に、当直扱いぢゃなくて時間外勤務扱いしているの?とか、いろいろ疑問は湧きますが、いちばんオモシロイ重要なのは、ココでしょうか。

補助金の半分以上は病院側の自腹。

やっぱり、ここは笑うところなんでしょう。いや、笑うしかないというか。
初めから、補助金3500万円と言えばいいのに、そう言わないところが行政らしいというか。


最後のほうの道のコメントもいかにもでわかりやすいし。

2009年9月13日日曜日

士別市が見舞金

皆さんの記憶も薄れているかもしれませんが、6年前、ある道北の市立病院勤務医が過労死するという痛ましい出来事がありました。

昨年になって、ようやく公務災害と認定されましたが、認定まで何年もかかったのは、判定に必要な資料が「士別市立病院に時間外勤務の記録がない」だったからです。


その続報が、今朝の北海道新聞に載っていました。

医師過労死に7000万円 士別市が遺族に見舞金

【士別】士別市は、市立士別総合部病院(現士別市立病院)から民間病院へ転勤直後に突然死し、過労による公務災害と認定された小児科医の男=当時(31)=の遺族に対し、見舞金7000万円を支払う方針を決めた。18日開会の臨時市議会に議案を提案する。

 地方公務員災害補償基金道支部が08年に医師の突然死を公務災害と認定したことなどから、遺族は今年3月、市が安全配慮義務に違反したと損害賠償を請求。市は「早期解決が望ましい」として、見舞金を支払うことにした。

 医師は02年10月から市立病院に勤務し、03年10月、上川管内の民間病院に移って6日目に死亡。

 当時、市立病院の小児科医は定員5人に対し3人だけで、月100時間超の時間外労働が続いていた。

 遺族の代理人の高崎暢弁護士は「市が違反を認めたと認識する。過重労働が続くすべての医療現場への警鐘になる」としている。
(2009年9月13日 北海道新聞)

「見舞金」なんて体の良い言いかたをしていますが、実質、和解金・示談金の類ですね。


これまでの経緯は、以前のエントリー「ある勤務医の過労死 ようやく公務災害認定へ」にまとめていますが、時系列を書き出すとこうなります。

  • 2002年4月 市立士別病院に臨時職員として勤務
  • 2003年8月 市立士別病院に正職員として勤務
  • 2003年10月 富良野協会病院勤務
  • 2003年10月 心疾患により突然死
  • 2004年11月 労災申請
  • 2004年12月 公務災害申請
  • 2006年12月 公務災害不支給決定
  • 2007年1月 労災認定
  • 2007年1月 公務災害審査請求
  • 2008年6月 公務災害認定



労災は、申請から2年2ヶ月で認定されています(これが長いか短いかは議論があるかもしれません)が、公務災害申請は、一度却下されています。

却下の理由は、前エントリーでの引用記事から抜粋すると、

  • 「資料不足などを理由に却下」
  • 時間外勤務の時間やオンコールの呼び出し状況についても、「記録がないため不明」
  • 「士別市立病院に時間外勤務の記録がない」
  • 病院側は、「オンコールの回数は月に5回程度で、1回当たりの所要時間は平均20分」と説明

などのようです。
一方で、労働局も、同じ資料を基に検討したはずですが、
  • 「労災保険の対象外の公立病院正職員だった二カ月を除く期間で、過重負荷の労働があったと判断した」
とあり、正反対の結論が出ています。
で、審査請求の後、昨年になってやっと公務災害も認定された訳ですね。

ご遺族のかたは、大事な家族を失うという悲しみを乗り越えるのだけでも大変だろうに、加えて、何年も公務災害認定のため戦ってきました。私には想像するしかできませんが、これまでの心身の負担は相当なものだと思います。
ですから、ご遺族が、示談に応じられる気があるのであれば、それで負担が減るのなら、それは構わないと思います。

ただ、士別市は、正式な総括をすべきですね。私の知る限り、これまで、市のHPにも報道メディアを通じても、この過労死についての正式なコメントは無いと思います。
医師が過労死に至った経緯、その原因・問題点、その後の対策を明らかにしてこそ、教訓として、これからに活かされると思うのです。

これ、特別なことを言っているのではなくて、当たり前のことです。医療事故があればその原因究明と再発予防の対策を講じられますし、その情報は(匿名化された上で)公開・共有化され、そのことでさらに再発予防に活かされます。

士別市が勤務医を過労死に至らしめるまで職場環境を放置していたのは許されないことですが、起こってしまった今、せめて、「間違いから学ぶ」という姿勢は示すべきでしょう。




<余談その1>
先日、東京都内の病院に勤務している知人を訪ねたのですが、タイムカードが支給されてました。どの程度有効かはわかりませんが無いよりはましと思います。まあ、把握していても「名ばかり管理職」扱いで時間外は算定されないのかもしれませんが。


<余談その2>
上記の通り、士別市行政の対応に批判的な私ですが、士別市自体は住みよい処のようです。
あの人は今こうしている 超人気女優だった和泉雅子さん
(2009年9月4日 livedoorニュース)から

●「『アルプスの少女ハイジ』みたいな生活を楽しんでいます」

「北海道の士別市ってご存じですか? 旭川から60キロぐらい北のちっちゃな町なんですが、自動車メーカーやヤマハ・スノーモービルのテストコースがありましてね。13年前、そこに山荘を建て、今では年に3、4回通い、合わせて半年ほど暮らしてるんです。6月から9月半ばまでは避暑を兼ねて、ほとんどあっち。この時季、東京にいるのは講演とか舞台とか、よほどの用事があるときだけです」

 東京・銀座は三原橋近くの自社ビル8階にある個人事務所で会った和泉さん、まずはこう言った。4代続く江戸っ子の和泉さんの実家はかつて、この場所で寿司割烹を営んでいた。

「敷地は4500坪あって、山荘は赤い屋根の木造2階建て。キツネにウサギ、鹿もよく遊びに来てくれて、『アルプスの少女ハイジ』みたいな生活を楽しんでます。あと、士別の方たちはすごく優しいんです。向こうに帰って、“ただいまぁ”って知り合いに電話すると、日常生活に必要なものは全部持って来てくれるし、クルマがなくても、誰かがアッシー君を買って出てくれる。銀座生まれの銀座育ちだけど、ホッとできるのは士別ですね」


医者としてでなければ、いい処なんでしょうねえ。

2009年9月10日木曜日

ある診療制限報道から

どこそこの病院の△■先生が辞めたとか、○×科がやばそうだとか、あまりにありふれた情景になってしまって、最近はどーでもいーやという気持ちです。
こういう記事も、そのうち当たり前すぎて記事にならなくなるのかもしれません。

愛知県内の20.8%の病院が医師不足のため診療制限

 愛知県内で医師不足のため診療制限をしている病院が今年6月末で69病院・20.8%あることが分かった。このうち特に影響の大きい診療制限を行っている病院は40病院で、その内訳は「診療科の全面休止」17病院、「入院診療の休止」15病院、「分娩対応の休止」10病院、「時間外救急患者受入制限」15 病院となっている。調査は県内の全332病院を対象に実施し、全病院が回答した。当該診療科を標榜する病院総数に対する割合で診療制限している病院数をみると、産婦人科24.6%、小児科12.0%、精神科11.9%―などの順で診療制限の割合が高かった。
(2009年9月9日 医療タイムス社)


愛知県の公式発表はこちらです。

「医師不足のため診療制限している病院について」
(愛知県 平成21年9月2日水曜日発表)

資料「医師不足のため診療制限している病院(平成21年6月末)」(PDFファイル)


で、表の一部を、少し見やすくしてたのがこれです。



診療制限をかけている病院数やパーセンテージに目がいきますが、分母の数(当該診療科を標榜する病院数)にも注目したいところです。
ということで、分母の病院数を表にしてみたのがこれ。





この発表資料では、診療科の全面休止は、診療科の廃止ではなく、診療制限をしている病院としてカウントされています。
ということは、この分母の病院数の減少分は、診療科の休止ではなく、今後の再開予定のない完全な廃止・撤退の可能性が高いと思われます。
しかも、前年のデータは「平成20年度」、平成20年4月から平成21年3月末までの数値ですが、平成21年のほうは、6月末時点の数値です。1年どころか、ひょっとして数ヶ月した経っていないのかもしれません。

そう考えてみれば、結構すごい結果なのかもしれません。

ありふれたなんて言ってすみませんでした。

2009年9月7日月曜日

オンラインレセ請求義務化撤回訴訟 始まります

「診療報酬オンライン請求義務化撤回訴訟」、9日に横浜地裁で開始だそうです。まだ始まってなかったんですね。

診療報酬オンライン請求義務化 初期投資に数百万円
  横浜地裁で9日から撤回訴訟
  道内の開業医 負担重く「廃業」も

 道内の4人を含む全国の医師が国を訴えた「診療報酬オンライン請求義務化撤回訴訟」が9日、横浜地裁で始まる。国は全医療機関に、専用のコンピューター網による診療報酬明細書(レセプト)の提出を2010年度までに義務化することを決めているが、医師側は数百万円に及ぶ初期投資の大ききから猛反発道内開業医の1,2割が廃業するとの調査もあり、患者らへの影響を懸念する声も広がっている。


 「国は医療崩壊を問題視しながら、医師不足に拍車をかける義務化を進めている。こんな『愚作』はない」。横浜訴訟原告団に加わる札幌市の60代の男性開業医は、思いのためを吐きだした。
 問題の訴訟は、神奈川県内の医師ら全国の1750人が横浜地裁に提訴。9日に第1回口頭弁論が行われる。大阪地裁でも、450人が参加する同様の訴訟の審理が進んでいる。

■11年度までに
 医師たちが問題視するレセプトのオンライン請求義務化は、小泉政権が進めた「構造改革」の目玉の一つ。08年度に導入が始まり、11年度の完全実施が決定済みだ。国は、請求を処理する機関の業務効率化などコスト低減が図られるとし、不正請求の発見や診療情報の活用なども視野に入れる。
 総合病院などでは導入が進んでいるが、開業医は手書きやレセプト作成用コンピューター(レセコン)で打ち出した紙での請求がなお主流。全国の開業医のオンライン化率は7月末現在、8.5%にとどまっている。
 今夏、オンライン対応のレセコンを導入した札幌市内の50代の開業医は「コンピューターや専用ソフトの購入費などに400万円かかっている。今度、診療報酬改訂時にも十数万円必要で、高齢の開業医には厳しい。医師の廃業は患者の切り捨て、他の医療機関に負担を回すことにつながる」と指摘する。
 道保険医会(会員約3600人)のアンケートでは回答350件のうち、18.3%が「義務化されれば開業医を辞める」と回答
 道医師会(同8440人)の調査でも、1600件のうち150件(9.4%)が「廃業を検討」などと答えた

■減る医療収入
 原告団の男性開業医も「引退」が頭をよぎる。
 二十数年前の開業時は相当余裕があったが、国の低医療費政策などの影響で、医療収入は最盛期の半分以下。ここ数年は、医療機器のローンに追われて赤字続きという。
 衆院選で圧勝した民主党は、公約で義務化に反対。情報技術(IT)化が困難な医療機関に配慮する「原則化」を打ち出しているが、今後の行方は不透明だ。
(2009年9月7日 北海道新聞)



記事中にある「オンライン請求に対応するための初期費用が400万円」というのが、診療所クラスの標準的な額なのか判断できる根拠がないのですが、ここでは、そう仮定して話を進めます。

最近の病院数、診療所数がどれくらいかというと、以前のエントリーの流用ですみませんが、厚労省の公開資料では、こうなっています。



診療所数は、今年の1月時点で99,497。まあ、10万くらいです。

で、上記の記事には「全国の開業医のオンライン化率は7月末現在、8.5%」とあります。
オンライン請求に未対応の開業医が91.5%いるということです。
開業医=診療所ではありませんが、まあ大体同じとすると(異論のある方にはすみませんが)、
10万 x 91.5% =9万1500
 
9万近くもの診療所が、オンライン請求未対応ということです。

1診療所あたり400万円の出費とすると、

400万円 x 9万 = 3,600億円

すごい額です。かなり大雑把ではありますが。


上記の記事では、オンライン化の利点として
  1. 請求を処理する機関の業務効率化などコスト低減
  2. 不正請求の発見
  3. 診療情報の活用

を挙げていますが、
その主たる受益者は、想像するにそれぞれ
  1. =>請求を処理する機関
  2. =>医療費負担者(医療保険機関、健保組合、患者など)
  3. =>厚労省、医療政策や医療経済の研究者、医療保険会社など

と思います。オンライン化費用負担者である診療所のメリットというのは想像力が乏しくて思いつきません。
費用負担層と受益層が一致せず、しかも負担金が巨額過ぎるのでは、負担層の理解が得られにくいと思うのですが、どうでしょう。ま、だから訴訟になっているのでしょうけど。