機長、空から主治医に連絡 救急隊連携、急病女性救う
先月中旬、アムステルダム発関西空港行きの旅客機の中で乗客が激しい腹痛を訴え、操縦中の機長がこの乗客のかかりつけの医師に電話連絡し、空港で待っていた救急隊員と医師が連携して無事に病院まで搬送された。一度は病院に受け入れを断られた。大阪府泉佐野市消防本部は「腹痛の原因が持病の急変であることがわかり、スムーズに搬送先を選べた」と話している。
救急搬送に立ち会ったのは、奈良県生駒市の開業医、山上和寿さん(52)。11月18日午前8時10分ごろ、中国上空を飛行中のKLMオランダ航空の機長から、50代の女性が機内で痛みを訴えていると、山上医師の携帯電話に連絡が入った。女性は持病や山上医師の連絡先が書かれたカードを持ち、機内に乗り合わせた日本人の医師と看護師から痛み止めなどの応急的な治療を受けていたという。
山上医師はこの日、自分の医院での診療があったが、診察を待っていたほかの患者の了承を得たうえ、関空に向かった。関空で泉佐野市消防本部の救急隊に病状について説明し、対応が可能な病院なども助言。泉佐野市内の基幹病院からは「態勢が整っていない」と受け入れを断られたが、同市内の救命救急センターに搬送された。
山上医師は「患者のたらい回しや医師不足が問題になっているが、足りないのは患者を救おうとする意識。互いの連携の重要性を改めて感じた」と話していた。現在、女性は退院して快方に向かっているという。(坪倉由佳子)
(2008年12月7日 朝日新聞)
航空機内で急病人が出たが、たまたま乗り合わせた医師・看護師や、患者の主治医、救急隊、医療施設らが各々尽力した結果、幸運にも大事に至らずに済んだ、という事例のようです。
尽力した方々に敬意を表しこそすれ、難癖をつけるような事例ではないと思うのですが、朝日フィルターを通すと、こんな記事になるんですねえ。
深刻な救急医療崩壊が指摘される大阪(まあ、大阪だけではないですが)で、2つめの病院で受け入れが決まったというのは、むしろ上出来だと思います。それでも「受け入れを断られた」という一言を忘れません。それも、二度繰り返すという念の入れよう。
さすがに受け入れ拒否が1病院だけでは、「たらい回し」とは言いにくいのでしょう。そこで、山上医師に「たらい回し」と言わせています。さらに、同医師に、「医療問題の原因は、医師の根性不足」ともとれる発言をさせて、医療者を背中から撃たせるという巧妙さ。
ところで、文中の「泉佐野市内の基幹病院」と「同市内の救命救急センター」がどこかはわかりませんが、過去記事にこんなのがあります。
内科・外科の救急告示を取り下げへ 市立泉佐野病院
大阪府泉佐野市は6月から、市立泉佐野病院(348床)で内科、外科の「救急告示」を取り下げ、夜間・休日の時間外診療を当面休止する方針を決めた。内科は救急車による搬送も原則として受け付けない。勤務医の減少が止まらず、軽症の救急患者が増え続ける中、医師の負担が重い時間外診療は不可能と判断した。
市によると、同病院では大阪市立大が派遣した消化器内科の医師7人が昨年3月末に一斉に引き揚げられるなど、内科医不足が深刻化。今年6月末には、さらに2人が退職して計9人になり、昨年3月時点の半分以下になる見通しだ。このため、6月1日から内科系疾患の時間外診療を原則としてやめる方針を固め、市議会に伝えた。府が一定の基準で認定する「救急告示病院」の看板返上も申し出た。
(中略)
同市以南の府南部では、生命に重大な危険がある患者に対応する府立泉州救命救急センター(同市)を除き、内科の救急病院がゼロになる。同市消防本部は07年、全体の半数近い約2500人を泉佐野病院に搬送し、約370人が入院した。市幹部は「市民への影響は避けられないが、内科医の負担が増し、全員が辞職することになれば病院自体が崩壊しかねない」と話す。(加戸靖史)
(2008年05月01日 朝日新聞)
記事の出典は・・・「朝日新聞」(爆)。
基幹病院がもともと「救急受け入れ不能」だって知ったうえで、今回の記事を書いてますね、多分。
今回に限って「受け入れ拒否」した病院名をぼかしたのは、こういう裏事情があったんでしょう。
なかなか、報道メディアの意図というか主張が汲み易い、見本のような記事だと感じました。
医療事故でもなんでもない事例を、ここまで昇華させる筆致はさすがです。
もちろん、誉めている訳ではないですが。
ところで・・・。
政府は「ITで医療を効率化」と呪文のように言ってますが、診療のために、生駒市から関空まで主治医が移動(乗り換え案内によると、所要時間は電車で約1時間半です)せざるを得ないような救急医療のどこに、ITが役立ったのでしょう?
ひょっとして、連絡に携帯電話を使ったところとか?(笑)